「積極活用層の67.7%が使えない」が意味する本当の壁

AIツールを契約し、社内で使い始めている経営者や現場から「思ったほどの効果が出ない」という声が聞こえてくる。2026年7月23日にラクスルが発表した従業員2〜100名規模の中小企業300名を対象とした調査結果は、このモヤモヤした違和感を明確な数字で証明した。

調査によると、自社でAIを積極的に活用していると答えた層であっても、実に67.7%が「使いこなせていない」と感じている。さらに、その学習方法の35.9%が「独学・手探り」に依存していた。ツールという道具は手元にあるものの、現場の仕事に当てはめる「使い方の型」が存在しないため、社員が個人の感覚で触る域を出ていないのだ。

これは現場の努力不足ではない。道具だけ渡されて「自由に業務を効率化してほしい」と言われても、日々の業務に追われる中小の現場でゼロから活用法を生み出せる人間はごく一部に限られる。型の不在こそが、導入後の伸び悩みを引き起こす最大の壁となっている。

AIを積極的に活用している中小企業であっても67.7%が「使いこなせていない」と感じており、AI導入で「業務フロー全体が変わった」企業はわずか1.9%にとどまる現状が明らかになった。
ラクスル株式会社「AI活用に関する実態調査 第2回」(2026年7月23日発表)

業務フロー変革1.9%の裏側|なぜ大改革ほど止まるのか

調査の中でさらに衝撃的なのは、AIを導入した成果として「業務フロー全体の変革」につながった割合が、わずか1.9%しか存在しないという事実だ。一方で、54.9%の企業が「日常業務の高速化」という小手先の時短効果にとどまっている。

なぜ全社的な業務の仕組みを変えるような大きな成果につながらないのか。原因は「AIを入れれば全社の生産性が勝手に上がる」という一括変革の幻想にある。ITの専任担当者も潤沢な予算もない中小企業が、全社の業務プロセスを一度に刷新しようと計画を立てても、どこから手をつければよいか分からず途中で必ず頓挫する。

実際に調査の中で、現場が求める支援として上位に挙がったのは「すぐ使えるテンプレート集(31.0%)」「個別サポート・相談窓口(25.3%)」、「同業者の活用事例集(23.0%)」だった。現場が必要としているのは大上段に振りかざす全社改革の構想ではなく、今日すぐ机の上で使える具体的な手順と型である。

2%側に立つ企業がやった『一点突破』の型

業務変革を達成した1.9%の側に入るために必要なのは、高度なプログラミング能力や高い予算ではない。やるべきことは真逆であり、「全社改革をきっぱり諦めること」だ。

成功している企業は、全業務をAI化しようとする無理なアプローチをとらない。「発生頻度が高く、人間の判断要素が少ない1つの工程」だけに絞り込み、そこに集中して型を当てはめている。たとえば、毎月数多く作成する見積書の確認作業や、未払い案件に対する督促文の下書き作成といった、机の上の単一の作業だ。

また、彼らは「AIに仕事を丸投げしない」という鉄則を守っている。AIはあくまで下ごしらえや叩き台の作成に使い、最後の確認や決定は人間が担う。AIが万が一間違えても社外の信頼を損ねない「安全な作業」から導入することで、現場の心理的ハードルを下げ、着実な定着を実現している。

うちの会社で来週始める3手順とやめどき

自社で成果を出すためには、リスクとコストを最小限に抑えた小さな検証から始める必要がある。来週から取り組むべき最小単位の実行プランを提示する。

明日から取り組む「1工程AI化」の3手順

  1. 【手順1】自社で最も時間を食っている「定型的で繰り返しが多い作業」を1つだけ選ぶ(見積作成、督促文下書きなど)
  2. 【手順2】入力データと期待する出力結果の「指示文(プロンプト)の型」を3つ作成し、無料版AIで1週間試す
  3. 【手順3】作業にかかった時間を計測・比較し、効果が確認できたらその型を社内で共有する(1週間試して時短効果が半分に届かない場合は、その工程は今のAIに向いていないと判断して速やかに撤退し、別の工程へ切り替える)

独学や手探りで35.9%の遠回りを続ける必要はない。撤退ラインを明確にした上で、1つの定型作業に絞って型を作り、効果を確認できたら次の工程へと広げていく。この地味な下ごしらえの積み重ねこそが、確実に成果を出す唯一の道筋となる。

出典 / SOURCES

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