before:契約したのに、アンケート回答すら半数だった

「生成AIの有料ライセンスを全社員分買い揃えたのに、使っているのは企画部の一部の人間だけ」「試用期間のアンケートを配布しても、回答すら半分しか戻ってこない」。そんな苦い経験を持つ経営者は少なくありません。ネット型リユース事業を展開する株式会社マーケットエンタープライズも、最初は同じ壁にぶつかっていました。

同社では当初、経営陣や一部の担当者が試験的にAIを利用する段階にとどまっており、現場への浸透には程遠い状態でした。従来の業務フローは長年の勘や紙の台帳、ベテランの経験に依存しており、現場の社員にとって「便利かもしれないが、自分の仕事のやり方を変えてまで使う理由」が存在しなかったからです。人を増やす余裕はなく、業務の標準化も進んでいない。この「仕組みの不在」こそが、ツールを契約しても現場で放置される根本原因でした。

効いたのは道具でなく順番:可視化・エバンジェリスト・業務再設計

マーケットエンタープライズがこの停滞を打破できた理由は、特別な新システムを入れたからではありません。同社は全社員へGoogle Geminiなどの有料版ツールを段階展開するにあたり、「導入の順番」そのものを根本から見直しました。

単にツールを配布するだけでは浸透しない。利用率の可視化と各部門のエバンジェリスト配置、そして業務プロセス自体の再設計をセットで進めたことが転機となった。
岡戸亜樹(株式会社マーケットエンタープライズ 執行役員)|7月31日公開セミナー登壇より

具体的には、まず社内公募で46名の有志を集め「生成AIプロジェクト」を発足させました。各部署に知識を持つ「エバンジェリスト(伝道師)」を配置し、誰がどれくらい使っているのかという利用率を数値で可視化したのです。その上で、全4冊・1,000ページを超える業務ガイドブックの検索化や、コンタクトセンターの対話型AIロープレ導入といった「机の上の一動作」まで業務を解体し、再設計していきました。

結果として、買取現場における梱包資材の自動選定や顧客対応の品質解析など、日々のルーティンにAIが自然と組み込まれました。専任のIT担当者を置けない中小企業でも、「現場のキーパーソンを一人巻き込み、特定の作業に限定して工程を組み直す」という考え方はそのまま移植できます。

定着を成功させる3つの手順

  1. 1. 利用状態の可視化社内で誰がどの頻度で使っているのかを数値化し、「使っていない状態」をそのまま放置しない環境を作る。
  2. 2. 現場エバンジェリストの選定役職者ではなく、現場で実際に手を動かしている意欲のある担当者を一人巻き込んで推進役に据える。
  3. 3. 業務プロセスの切り出しと再設計全業務の一括自動化を狙わず、ガイドブック検索やロープレなど「単一の作業」をAI前提の工程に作り直す。

7.8万時間を中小の損益計算書に割り算する

同社は全国19拠点・全社員で社内AI利用率95%超を達成し、年間で約78,000時間という削減効果を実証しました。コンタクトセンターでは管理者の研修負担が30%削減されるなど、明確な数字として効果が現れています。

この「7.8万時間」という巨大な数字に気圧される必要はありません。従業員10人の会社であれば、割り算をしてみましょう。「社員1人が、1つの定型業務で月に10時間(1日30分)浮かせる」ことができれば、10人で年間1,200時間の余力が生まれます。重要なのは、浮いた時間を単なる残業削減で終わらせず、新規顧客へのフォロー電話や現場の接客といった「利益を生む活動」に化けさせることです。

1拠点1人1業務から始める再現手順とやめどき

大企業のような巨額の開発や専任チームは、中小企業には必要ありません。読者が明日から取り組むべきは、リスクを徹底的に抑えた「1拠点・1人・1業務」の実験です。いきなり全員にアカウントを配るやり方は一旦忘れてください。

まず自社で最も時間を食っている定型作業(見積書の下書き作成、問い合わせFAQの参照など)を1つだけ特定します。次に、現場で最もPC操作に抵抗がない社員1人に使ってもらい、1週間でどれだけ作業時間が縮まったかを計測します。ただし、撤退ラインを一つ定めておきます。「1週間試して作業時間の削減が5割に届かない場合」は、プロンプトの調整に固執せず、その業務での利用を諦めて別の工程に切り替えてください。撤退基準を持っておくことこそが、現場の疲弊を防ぐ安心材料になります。

出典 / SOURCES

※本記事は公開情報をもとに AI が自動で編集・要約し、出典を明記しています。正確性は各出典をご確認ください。

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