離職率38.5%の現場で、育成時間はなぜ放置されてきたか

大分県内でラーメン店などを手掛けるヤマナミ麺芸社では、かつてパート・アルバイトの離職率が38.5%に達していた。地方の飲食業界で深刻化する人手不足の中で、新人が入っても教える側の店長や先輩スタッフの手が回らず、放置された新人が不安を感じてすぐに辞めてしまう悪循環に陥っていた。

教える側の立場から見ても、教育は重い負担だった。店舗ごとに教え方が微妙に異なり、忙しいピークタイムに「これどうやるんですか」と聞かれるたび手が止まる。しかし、専用の教育担当者を置く余裕はなく、店主やベテランの個人技に頼る教え方が長年放置され続けていた。これは、人手も予算も限られた多くの地方中小店舗で共通する痛みの構造である。

Teachme Bizで何を標準化したか(工程・体制・費用感)

ヤマナミ麺芸社はこの課題に対し、スタディスト社が提供するAIマニュアル作成ツール「Teachme Biz」を導入した。全業務を一気に対象とするのではなく、店舗のポジションや時間帯ごとに作業を細かく分解し、動画と写真を用いた手順の標準化を進めた。

具体的には「チャーハン検定」のような独自の学習検定とマニュアルを連携させ、新人が一人でスマートフォンから動画を見て手順を学べる体制を構築した。システム管理を専任のIT担当者に任せるのではなく、現場の店長やリーダーが実際の作業風景を撮影してその場で手順化する運用を徹底した。その結果、教育にかかる時間を年間約1,800時間削減することに成功した。これは店舗全体で1日あたり約5時間分の教育コストが浮いた計算になる。

1,800時間 年間で削減された育成時間 約200万円相当のコスト削減
12.7 pt 離職率の改善幅 38.5% から 25.8% へ低下

浮いた200万を利益にせず時給へ回した『逆の分配』が効いた理由

一般的な企業のAI化では、浮いた時間やコストは「人件費の削減」や「会社の利益確保」に向けられがちだ。しかし同社は、削減できた年間約200万円相当のコストを会社の利益として残さず、全額を現場パート・アルバイトの時給アップ原資へ充当するという「逆の分配」を選択した。

AIマニュアルで生み出した余力を人件費削減ではなく現場への時給アップへ充当し、離職率を38.5%から25.8%へと大幅に改善した。
ヤマナミ麺芸社・スタディスト プレスリリース(2026年8月24日公表)

教える側のベテランは「マニュアルを作れば自分の仕事が楽になり、さらに店舗全体の給与原資が増える」と実感できたため、進んで手順化に協力した。教わる側の新人も、検定に合格して技能が上がれば時給に直接反映される仕組みができあがった。この分配モデルにより、パート・アルバイトの離職率は25.8%へと大幅に低下した。スタッフの定着率が上がったことで、毎月の採用費や急な穴埋め残業といった隠れたコストまで抑制される好循環を生んでいる。

この事例が効かない条件と、明日始める一工程マニュアル化

ただし、この事例のやり方をそのまま真似ればどこでも成功するわけではない。注意すべきは、「業務手順の標準化を現場が拒む環境」では機能しない点だ。また、ツールの月額利用料や動画撮影の手間といった運用コストを考慮せず、ただツールを入れれば自動で時給が上がるわけではない点も理解しておく必要がある。

重要なのは、ツールそのものよりも「効率化で浮いた余力を現場に還元して定着させる」という経営者の分配設計にある。高額なシステムを一度に契約する前に、まずは自店舗で最も教えるのに時間がかかっている1工程(調理手順やレジの締め作業など)をスマホで撮影し、1枚のマニュアルに落とし込むことから始めたい。

出典 / SOURCES

※本記事は公開情報をもとに AI が自動で編集・要約し、出典を明記しています。正確性は各出典をご確認ください。

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