「新しいツールを入れても、使う人と使わない人が分かれ、結局会社全体の残業が減らない」。こんな悩みを抱える中小企業の経営者は少なくありません。不動産投資や賃貸管理事業を手がける大和財託(従業員約240名)も、かつては全く同じ壁にぶつかっていました。しかし同社は2026年10月、全社横断プロジェクトにより対象業務の作業時間を31.2%削減したと発表しました。

同社が成功したのは、特別なシステムを自作したからではありません。注目すべきは、使ったツールそのものではなく「全社に定着させるまでの順番」です。地方・中小企業が来週から真似できる導入の組み立て方を解剖します。

複数SaaSを入れても残業が減らなかった理由

大和財託では以前から、業務効率化を目指して部門ごとに便利なSaaSツールを導入してきました。しかし、それらは部署内での作業を一部早めるにとどまり、組織全体で見ると「部門ごとの局所最適」に陥っていました。ある部署の作業が早くなっても、別の部署への引き継ぎや確認作業で手間取り、会社全体の残業削減には結びついていなかったのです。

中小企業でもよく見られるこの現象の原因は、業務の「つなぎ目」にある手作業が放置されていることです。個別のツールを増やすだけでは、バラバラのデータを照合する作業や、最終確認のための下調べといった泥臭い手間は消えません。同社はこの反省から、ツールを無闇に増やす路線を捨て、全社で共通して発生している「時間の奪い合い」の原因を潰す方針へ切り替えました。

効いたのは道具でなく『導入の順番』

同社が導入したのはMicrosoft Copilotですが、全社員240人に一斉にアカウントを配って「自由に使ってください」とはしませんでした。最初に動いたのは、経営陣と推進担当者を含めた約10名の小さなチームです。

全社員約240名を対象に導入・活用を推進した結果、対象業務の作業時間を31.2%削減し、全社目標である「業務コスト30%削減」を達成した。
大和財託株式会社 プレスリリース(2026年10月14日)

まず役員やキーマン自身が実際の業務で使い込み、「どこで入力につまずくか」「どんな指示を出せば欲しい回答が得られるか」という障壁をあらかじめ特定しました。経営層が自ら体験して効果と難所を把握した上で全社展開を決断し、横断的な推進チームを結成。現場の業務に沿った実務的な研修を用意することで、「入れたけれど誰も使わない」という事態を回避したのです。

入居審査の突合作業に絞った一点突破

全社展開にあたって同社がターゲットに据えたのが、賃貸管理業務の中でも特に負荷が大きかった「入居審査業務」でした。勤務先情報や過去の滞納履歴、本人確認書類など、多角的なデータを突き合わせる確認作業は、担当者の時間を大きく削っていました。

大和財託が実施した定着の4ステップ

  1. 1. 経営陣トライアル経営陣と推進担当者約10名で事前検証し、使い方のコツと運用の障壁を特定。
  2. 2. 業務の絞り込み全業務ではなく「データ突合」など最も時間を食っている手作業に焦点を当てる。
  3. 3. 実務型の横断研修全社推進チームを結成し、座学ではなく実際の業務フローに即した研修を実施。
  4. 4. 高付加価値業務への転換下ごしらえを自動化し、浮いた時間で担当者は最終判断と顧客対応に集中。

この突合作業の「下ごしらえ」に生成AIを投入したことで、情報の整理や整理文の作成にかかる時間を劇的に短縮しました。重要なのは、AIに判断まで丸投げしたのではなく、「人間が最終確認を行うための事前整理」に役割を限定した点です。判断の精度を保ちながらリードタイムを縮めたことで、担当者は顧客対応や交渉といった直接価値を生む業務に集中できるようになりました。

この事例が効かない条件と落とし穴

ただし、この成功体験をそのまま自社に持ち込む際には注意点があります。この手法が機能する前提条件は、社内のデータが一定程度デジタル化されていることです。紙の書類しか存在しない状態では、そもそもAIへ読み込ませる前段階で手が止まってしまいます。

また、落とし穴となりやすいのが「推進チームの孤立」です。経営陣だけが盛り上がり、現場の業務実態を無視したルールを決めると、現場は入力作業を隠れて手作業に戻してしまいます。「AIはミスをするもの」という前提で最終確認の責任者を明確にし、間違いが起きてもカバーできる安全な工程から始めることが定着の条件です。

大和財託の事例が教えてくれるのは、高価な最新システムを買うことの重要性ではありません。「まず経営層が触り、一番重い作業1つに絞って、順番通りに広げる」という泥臭い段取りこそが、現場に熱狂を取り戻す鍵になります。

出典 / SOURCES

※本記事は公開情報をもとに AI が自動で編集・要約し、出典を明記しています。正確性は各出典をご確認ください。

30分で課題を整理する